「Gemini 4が出たと聞いたが、うちの会社の仕事で何が変わるのか」「会社のGoogleアカウントで使えるのか」「月いくらかかるのか」。研修やセミナーの場でよく出る質問です。今回も同じ3つを、先に答えておきたいと思います。
2026年9月30日(米国時間)、Googleが新しい最上位モデル「Gemini 4 Argon(アルゴン)」を発表しました。発表の時点では一部のサイバー防御の担当者だけに提供され、10月13日(米国時間。日本語版の公式ブログは10月14日付)に開発者・企業・個人への一般提供が始まっています。Googleは、長く複雑な仕事を最後までやり切る力を打ち出していて、文章の指示に従う力も過去最高だと説明しています。
この記事では、①Argonとは何か、②どこで使えていくらか、③熊本の会社の仕事で何が変わるのか、④今すぐ何をすればよいか、の4つに順番に答えます。数字はGoogleの公式資料と、10月18日の午前に熊本の社内で行った実機テストだけを使っています。読者は、ITに詳しくない社長や総務・現場の責任者を想定し、専門の言葉は出るたびに一言で噛み砕きます。機能や提供範囲は2026年10月18日時点のもので、変わることがあります。
3分で分かる要点
- 結論から言うと、普段の仕事(電話メモの受付票、見積りの計算、売上表の集計、FAXの読み取り、長い資料から探す)は、今のGemini 3.8 Flashでもほぼ満点でした。社内テストでは「Gemini 4にしたから正確になる」という差は見えていません
- Gemini 4で変わるのは「1問1答の賢さ」ではなく「任せられる仕事の大きさ」です。資料の山から提案書まで、何十工程の作業を最後まで、というのがGoogleの打ち出しで、ここは今回の社内テストでは測っていません
- いちばんの発見は「考える深さ」です。Argonは初期設定だと考えずに即答し、条件10個のシフト表で3回とも違反。考える深さを「高」にすると3回とも正解でした(ただし1〜2分半かかります)
- 会社のGoogle Workspace(Business Starter・Standard・Plus、Enterprise)の標準契約では、Argonは使えません。使えるのは追加契約のAI Expanded Access(1日200回)か、個人向けのGoogle AI Pro(月2,900円)です。個人アカウントには社外秘を入れないでください
- API料金は11月30日までの導入価格で、12月1日から入力も出力も2倍になります。今の価格で予算を組まないことです
Gemini 4 Argonとは——「Pro」ではなく「Argon」
結論から言うと、Gemini 4 Argonは「Geminiの新しい世代の、最初の最上位モデル」です。それだけ聞くとよく分からないと思うので、まず名前から整理します。
これまでのGeminiは「3.1 Pro」「3.8 Flash」のように、世代の数字と、大きさを表す「Pro」「Flash」の組み合わせで呼ばれていました。今回は「4 Pro」ではなく「4 Argon」です。Argonは固有の名前で、Googleは「Gemini 4ファミリーの残りも順次出す」と書いているので、これから同じ世代の別の名前が増えていく、という位置づけかなと思います。
比べる相手は2つです。一つは前の世代の最上位Gemini 3.1 Pro。APIではプレビュー版のままで、最終更新は2026年2月なので、最上位の刷新はおよそ7か月ぶりです。もう一つは、多くの会社が普段使っているGemini 3.8 Flashです。会社の人にたとえると、次の表のようになります。
| モデル | 会社でいえば | 公式の位置づけ |
|---|---|---|
| Gemini 4 Argon | 大きな案件を最後まで任せる新しい主力 | 長く複雑な仕事。開発・法務・財務・サイバー防御・科学 |
| Gemini 3.1 Pro | 前の世代のベテラン(プレビュー版のまま) | 前世代の最上位。最終更新は2026年2月 |
| Gemini 3.8 Flash | 速くて安い実務担当 | 普段使い。年内は入力0.75ドル・出力3.75ドル |

上の図が、この記事の地図です。後半の社内テストは、この3人に同じ仕事を頼んで比べています。
3.1 Proから何が変わったか
Googleの発表とモデルカード(モデルの仕様と安全性をまとめた公式の報告書)によると、変更点は次の6つに整理できます。
| 項目 | Gemini 3.1 Pro | Gemini 4 Argon |
|---|---|---|
| 作り | 前世代のモデル | 前のモデルの改造ではなく、新しく作られたモデル(専門家の組み合わせ型) |
| 1回に書ける量(出力の上限) | 6万4千トークン | 100万トークン(Googleの発表では業界最大) |
| 一度に読める量(入力の上限) | 1,048,576トークン(20万トークンを超えると単価が上がる) | 入力と出力の合計で1,048,576トークン |
| 考える深さ | 初期設定で考えてから答える | 低・中・高の3段階から選ぶ。APIの初期設定ではほぼ考えずに即答した(社内テストの観測) |
| API料金(100万トークンあたり、入力と出力) | 2ドルと12ドル | 11月30日まで2ドルと10ドル。12月1日から4ドルと20ドル |
| 知っている情報の期限 | — | 2026年3月まで |
トークンはAIが文章の量を数える単位で、日本語ではおおむね1文字が1トークン弱です。「1回に書ける量が100万トークン」というのは、長い報告書や何十工程の作業の記録を、途中で切れずに一気に書ける、という意味です。Googleは「深く考えて何十万トークンも一気に書ける余裕があると、難しい問題を一度に解く深さが増す」と説明しています。入力は文字・画像・動画・音声・PDFを受け付け、出力は文字だけです。
もう一つ、文章の面でGoogleは「文章の指示に従う力が過去最高」「遠回しな言い方や繰り返し、決まり文句が減った」と書いています。X上でも「日本語が読みやすい」という声(@KutexKute)がありますが、これは個人の感想です。日本語だけの性能の公式な数字は、モデルカードにも評価方法の資料にもありません。

この図は6つの変更点を1枚にしたものです。会社の仕事に直結するのは、書ける量、考える深さ、料金の3つだと思ってください。
公式の数字と第三者の数字
発表ページには、性能を示すテストの点数が並んでいます。先に前提を書いておくと、載っているのはGoogleが選んだテストです。なので「Googleの発表では」と主語を付けて読みます。
Googleの発表では、金融・開発・法務・税務の仕事を米国の経済への寄与で重み付けした指標(Vals Index)で1位、業務の自動化を端から端まで測る指標(AutomationBench)で51.3%の1位、実務の開発を測る指標(DeepSWE v1.1)で77.9%、長い動画の理解(LVBench)で91.7%、とされています。X上に転載された公式の比較表では19項目中14項目で首位、知識労働の指標でArgon 68.9%、Claude Opus 5.5が67.0%です。
第三者の測定もあります。Artificial Analysis(AIの性能を独立して測る機関)の総合指標では、Claude Opus 5.5が58、Argonが53でOpus 5.5が上です。プログラミングを任せる性能の指標では、Claude Sonnet 5.5が68点で1件約14ドル、Argonが64点で約5.8ドル、GPT-6.1 Solが63点で約1ドルでした。日本語で3つを動画で比べたチャエンさん(@masahirochaen)は、契約書チェックでArgonが7点中6点(他の2つは満点)、メール添削で「予定」を消してしまった例を挙げ、「王者奪還とまでは言えない」という結論です。
つまり「Googleの発表では多くの項目で首位、第三者の総合ではClaudeの最上位と拮抗」というのが、2026年10月18日時点の見え方です。ただ、この記事で言いたいのは順位ではありません。熊本の会社の仕事で何が変わるか、です。
どこで使える?いくら?——会社のGoogleアカウントで使えるかの判断表
ここが、この記事でいちばん先に確かめてほしいところです。結論から言うと、「会社のGoogle Workspaceの標準契約では使えない」「個人向けのGoogle AI Proなら使える」です。順番に表にします。
個人向けのプラン(Geminiアプリ)
出典はGoogleの料金ページ(2026年10月18日時点、ログインせずに表示した金額)です。ページに「税込」「税別」の表記はないので、表示どおりに書きます。
| プラン | 月額(公式ページの表示) | Argon |
|---|---|---|
| 無料 | 0円 | 使えない |
| Google AI Plus | 725円 | 使えない |
| Google AI Pro | 2,900円 | 使える |
| Google AI Ultra(5xと20xの2段階) | 5xが14,500円、20xが32,000円 | 使える |
日本はGoogle AI Pro・Ultraの提供国に入っていて、日本語版の公式ブログにも「Pro・Ultraで使える」と書かれています。Geminiアプリと、検索のAIモード(検索結果をAIが答える機能)で使えます(AIモードでArgonを使える国の一覧は未確認です)。開発ツールのAntigravityはUltraだけです。
利用回数には上限があります。個人向けは「使った計算量」で上限が決まり、5時間ごとに回復し、週の上限もあります。Plusは標準の2倍、Proは4倍、UltraはProの5倍または20倍という倍率で、上限に達するとFlash-Lite(いちばん軽いモデル)に切り替わります。Argonを何回使えるかの具体的な回数は公表されていません。X上では「Proだと4〜5往復で5時間の上限に当たる」(@fusen74)「上限中は3.8 Flashまで使えなくなる」(@VVTypingghost、@tora_kappa)という声が出ていて、不満の中でいちばん多かったのがこの上限の話でした。個人の自己申告ですが、Pro契約で業務に組み込むつもりなら、上限の体感は先に確かめた方がよいかなと思います。
会社のGoogle Workspace
ここは一次情報が英語版のヘルプページにしかありません(日本語版は翻訳が追いついておらず、Argonの行がまだありません)。英語版の表をそのまま日本語にします。
| 契約プラン | Argon | 参考:ほかのモデル |
|---|---|---|
| Business Starter(Enterprise Essentialsなども同じ列) | 使えない | — |
| Business Standard・Plus、Enterprise Standard・Plus | 使えない | Pro:4時間で25回、Thinking:1日300回 |
| 上の契約+AI Expanded Access(追加契約) | 1日200回まで | Thinking:1日600回 |
| 上の契約+AI Ultra Access(追加契約。新規販売は終了) | 1日500回まで | — |
ポイントは3つです。一点目、標準契約では使えません。Business StarterでもStandardでもPlusでも、Enterpriseでも同じです。X上にも「会社のWorkspaceアカウントでは3.8 Flashと3.1 Proしか選べない」(@Nicolash4zp)という声があります。一方で「Workspaceで使えた」というコメントも別の場所にあり、契約内容で変わるので、自社の管理者に確認してください。
二点目、使うにはAI Expanded Accessという追加契約が要ります。付けられるのはBusiness Standard・Plus、Enterprise Standard・Plusだけで、Business Starterには付けられません。価格は公式ページに載っておらず、通貨と契約期間で変わるとだけ書かれています。円の金額は未確認です。18歳未満には割り当てできません。
三点目、AI Ultra Accessはすでに新規販売を終えています。2026年5月5日より前に年契約した会社だけが使え、7月7日以降は順にAI Expanded Accessへ切り替わります。これから契約する会社が選べる上位の追加契約はAI Expanded Accessだけです。
参考に、Workspace本体の日本向けの定価(公式ページの表示。月払いか年契約か、税込かどうかは未確認)は、Business Starterが1ユーザー月800円、Standardが1,600円、Plusが2,500円です。
API・Gemini Enterprise
自社の仕組みに組み込む「部品」として使う窓口がAPIです。モデルの指定名はgemini-4-argonで、無料枠では使えません(有料枠のみ)。有料枠では、入力も出力も「製品の改良に使われない」と規約に書かれています。日本はAPIの提供国に入っていて、利用は18歳以上です。
もう一つ、Google Cloudが企業向けに出している「Gemini for business」(中身はGemini Enterpriseという製品の各エディション)があります。Workspaceの契約とは別の製品で、Microsoft 365やSlackなど100以上のサービスとつながり、入力したデータが学習に使われないと明記されています。Argonは10月13日に一般提供が始まりましたが初期設定ではオフで、10月27日から自動でオンになります。データの保管・処理場所として選べるのは米国とEUだけで、日本(東京)はありません。Plusエディションを30日無料で試せます。
判断表——自社はどの入口か
以上をまとめると、熊本の会社がArgonを使う入口は、立場ごとに次のようになります。
| 自社の状況 | 使う入口と月額の目安 | 社外秘の扱い |
|---|---|---|
| まず個人で試したい | Google AI Pro(個人アカウント)。月2,900円(公式ページの表示) | 入力内容が人の確認・改良に使われることがある。社外秘は入れない |
| 会社のWorkspace(Standard、Plus、Enterprise)で使いたい | 管理者がAI Expanded Accessを追加契約。価格は未公表(通貨と契約期間で変わる) | 学習に使われない。1日200回まで |
| 会社のWorkspaceがBusiness Starter | 標準でも追加契約でも使えない | Standard以上への変更が前提 |
| 自社の仕組みに組み込みたい | Gemini API(有料枠)。使った分だけ。導入価格は11月30日まで | 有料枠は改良に使われない |
| 全社の業務AI基盤として入れたい | Gemini Enterprise(Gemini for business の中身)。価格は未確認、Plusエディションは30日無料 | 学習に使われない。保管場所は米国・EUのみ |

この図は、上の判断表を「はい・いいえ」で辿れる形にしたものです。自社の契約がどこに落ちるか、管理者と一緒に指でなぞってみてください。
一つ大事な線引きがあります。個人向けのGoogleアカウントでは、入力した内容を人が確認したり、改良に使ったりする場合があると公式ヘルプに明記され、「機密情報は入力しないで」と書かれています。逆を返せば、会社の情報を扱うならWorkspaceの契約か有料APIを使う、個人アカウントでは公開済みの文章や架空の題材で練習する、という使い分けさえ守れば、月2,900円で今日から試せる、ということです。
API料金——12月1日から2倍
APIの料金は、100万トークンあたりの米ドルです。1ドル150円で円に直すと、入力2ドルは約300円、出力10ドルは約1,500円です。
| 区分 | 11月30日まで(導入価格) | 12月1日から |
|---|---|---|
| 入力 | 2ドル | 4ドル |
| 出力(考える過程の分も含む) | 10ドル | 20ドル |
| 自動キャッシュ(同じ前置きの読み直し) | 0.10ドル | 0.20ドル |
| まとめて処理(Batch・Flex。安い代わりに遅い) | 1ドルと5ドル | 2ドルと10ドル |
| 優先処理(Priority) | 3.60ドルと18ドル | 7.20ドルと36ドル |
参考に、前世代の3.1 Proは入力2ドル・出力12ドルなので、導入価格のArgonは3.1 Proより出力が少し安く、12月からは3.1 Proより高くなります。3.8 Flashは年内が0.75ドルと3.75ドル、2027年1月から1.50ドルと7.50ドルです。
注意点が2つあります。一点目、「キャッシュ95%引き」は自動でかかるキャッシュ(暗黙キャッシュ)だけの話で、自分で指定する方式(明示キャッシュ)はArgonでは使えません。二点目、Google検索・Googleマップとの連携は月5,000回まで無料で、超えた分は1,000回ごとに14ドルです。
X上でも「12月から倍になるので、今の価格で予算を組まないこと」(@icyeos)という注意が出ています。
社内テスト——熊本の仕事6題で確かめた
ここからが、この記事の中心です。公式の数字は英語のテストが中心なので、「熊本の中小企業の日本語の仕事」で確かめました。先に条件を書きます。
- 実施は2026年10月18日の午前、熊本の社内から。経路はGemini API(有料枠・自社のキー)
- 比べたのはGemini 4 Argon(gemini-4-argon)、前世代の最上位Gemini 3.1 Pro(gemini-3.1-pro-preview)、普段使いのGemini 3.8 Flash(gemini-3.8-flash)の3つ
- 設定は、特に書かない限り初期設定のまま。Argonの初期設定では、考える過程のトークンが記録されず、数秒で返ってくる「ほぼ考えずに答える」動きでした(考える深さを「高」にしたときだけ記録されました)。3.1 Proと3.8 Flashは初期設定で考えてから答えます
- 費用は1ドル150円。料金は10月18日時点の公式で、考える過程の分も出力として計算しています
- 題材はすべて架空です。登場する人名・店名・会社名は社内で作ったもので、実在の会社・個人の情報は使っていません
- 全体で50回、約300円。小さな社内テストで、性能の順位を決める試験ではありません

この図は、6つのテストで何を頼んだかの一覧です。上から順に、普段の事務、計算、表、画像、条件の多い仕事、長い資料、という並びです。
結果の一覧
| 仕事 | Argon | 3.1 Pro | 3.8 Flash |
|---|---|---|---|
| 1 熊本弁の電話メモを受付票に | 2/2、12.3秒 | 2/2、13.1秒 | 2/2、9.1秒 |
| 2 塗装の見積り計算+お客様へのメール | 2/2、8.8秒 | 2/2、17.8秒 | 2/2、10.1秒 |
| 3 土産物店の月別売上表(6品目×12か月)で5問 | 2/2、17.0秒 | 2/2、48.1秒 | 2/2、24.5秒 |
| 4 手書き風FAX注文書の画像を受注データに | 2/2、13.0秒 | 1/2、14.4秒 | 2/2、10.3秒 |
| 5 条件10個のシフト表(7人×1週間) | 0/3、4.6秒(考える深さ高なら3/3、103.6秒) | 3/3、78.9秒 | 3/3、36.4秒 |
| 6 議事録180回分(80,929字)から3問 | 2/2、5.0秒(考える深さ高でも2/2、96.1秒) | 2/2、10.3秒 | 2/2、5.8秒 |
数字は「正解数/回数、平均の秒数」です。Argonは初期設定のまま(括弧内だけ考える深さ「高」)。1回あたりの費用は、後の「費用を『月の仕事』に直す」の表にまとめています。表を見て分かるのは、1〜4題と6題はほぼ全問正解(誤りは3.1 ProのFAXの1回だけ)で、大きな差が出たのは5題のシフト表だけ、ということです。以下、題ごとの見どころです。
1. 熊本弁の電話メモを受付票に
植木の田上さん(架空)がリフォーム会社に電話した内容を、そのまま受付票にする仕事です。「水の漏れよっと」「いっちょ割れとる」「おらんとです」「来てはいよ」などの熊本弁が混ざっています。引っかけは「蛇口の古かつは、なおしとってよか」の「なおす」で、熊本では「片付ける・しまう」の意味です。「修理する」と読むと誤りになります。
結果は、6回とも「なおす=片付ける」と正しく読み、方言の注意書きまで付けました。名前・電話番号・日時・駐車場所も全員正確です。細かい差は、古い蛇口を「処分してよい」のか「保管してほしい」のかの解釈が回によって分かれたことで、Argonの1回目は「処分せず保管」、3.1 Proの2回目は「引き取って処分してよい」と書きました。原文からはどちらとも取れるので、これは人が電話で確かめるべき点です。AIが受付票を作ってくれても、確認の電話は人の仕事として残ります。
2. 塗装の見積り計算とお客様へのメール
外壁塗装120平方メートル×3,800円、足場150平方メートル×900円、ただし「前回の足場が半分残っとるけん、組むのは半分でよか」、高圧洗浄は外壁と同じ面積×250円、リピートなので税抜から3万円引き、という条件です。正解は、足場75平方メートルで67,500円、税抜523,500円、消費税52,350円、税込575,850円です。
6回とも全部正解でした。「足場は半分」の読み取りも全員ができていて、お客様へのメールも全員そのまま使える水準です。見積りの計算は、どのモデルでも差が出ませんでした。
3. 土産物店の月別売上表で5問
熊本の土産物店(架空)の月別売上CSVを渡し、5問に答えさせました。品目はからし蓮根・いきなり団子・馬刺し・陣太鼓・晩白柚ゼリー・球磨焼酎の6つで、4月始まりの年度です。「年間でいちばん売れた品目と金額」「上期と下期の差」「全品目の年間合計」「前月から最も減った月」のような問いで、正解は、馬刺し12,970,000円、6月2,469,000円、上期2,329,000円・下期2,575,000円で差が−246,000円、年間40,429,000円、9月に2,050,000円減、です。
6回とも5問すべて正解でした。差が出たのは速さで、Argonが17.0秒、3.8 Flashが24.5秒、3.1 Proが48.1秒です。費用は、Argonと3.8 Flashがほぼ同じ約2.5円、3.1 Proは約16円でした。
4. 手書き風FAX注文書の画像を受注データに
レストラン(架空)から精肉店へのFAX注文書を手書き風フォントで作り、少し傾けてノイズを入れた画像を渡しました。明細5行で、豚バラの数量「10」を二重線で消して「12」に訂正、備考が3行あります。
Argonと3.8 Flashは2回とも完璧で、訂正を12と読み、「要確認」の欄に訂正があった事実まで書きました。一方、3.1 Proの2回目は、画像にない誤字(「お願いいします」)を読み取り、それを「誤記と思われる」と報告しました。ありもしない誤りを作った、ということです。1回目は完璧だったので、たまに起きる種類のものです。もっともらしい誤り(ハルシネーション)は、最上位のモデルでも、前の世代でも消えていない、というのがここの教訓です。
5. 条件10個のシフト表——Argonの落とし穴
熊本市内の土産物店(架空)の7人・1週間・朝夕2人ずつのシフト表を、条件10個で組ませました。全員週4回、同じ日に朝夕の両方は不可、田中さんは火水休み、松本さんは朝のみ、緒方さんは夕のみ、坂本さんは土日両方、新人の村上さんと永田さんは同じシフト不可、各シフトにレジ締めできる人を1人以上、4連勤禁止、西さんは月曜休みで金曜は夕、の10個です。答えは約1,352万通りあるので、正解は1つではありません。条件を全部守れているかはプログラムで自動判定しています。
| 設定 | 正解 | 平均の時間 | 1回の費用 |
|---|---|---|---|
| Argon(初期設定) | 3回中0回 | 4.6秒 | 0.40円 |
| Argon(考える深さ:低) | 3回中1回 | 7.3秒 | — |
| Argon(考える深さ:中) | 3回中1回 | 4.9秒 | — |
| Argon(考える深さ:高) | 3回中3回 | 103.6秒(66〜162秒) | 約9.8円 |
| 3.1 Pro(初期設定) | 3回中3回 | 78.9秒 | 約18.4円 |
| 3.8 Flash(初期設定) | 3回中3回 | 36.4秒 | 約2.7円 |
Argonの初期設定は、3回とも条件違反でした。4〜5秒で返ってくるのですが、「木曜の夕にレジ締めできる人がいない」(2回)、「坂本さんが5回・永田さんが3回」(1回)と、10個の条件のどれかを落としています。考える深さを低・中にしても3回中1回。高にして初めて3回とも正解になりました。ただし高は1回あたり66〜162秒、平均で103.6秒かかり、3.8 Flashの36.4秒より遅く、費用も約9.8円と3.8 Flashの約2.7円より高くなります。
読み方はこうです。Argonは「考える深さ」を上げないと、条件を全部守る仕事で取りこぼします。高にすれば確実ですが、1〜2分半かかります。X上でも「Argonを選んでも、考える深さが既定の低のままのことがある」(たか田さん @daifukujinji)という注意が出ています。なので、Argonを選んだら、考える深さも一緒に確かめてください。この記事でいちばん覚えて帰ってほしいのは、ここです。

この図は、考える深さを上げるにつれて正解が増え、時間も増える様子を階段で表したものです。即答するArgonは、条件の多い仕事では「考えていない」可能性を疑ってください。
6. 議事録180回分(80,929字)から3問
架空のリフォーム会社の週次営業会議の議事録180回分(80,929字)を一度に渡し、3問に答えさせました。10月8日のClaude Haiku 5.5の記事と同じ資料です。問1は「第119回の『くまもと住まいフェア2026』の費用は?」(正解38万円。前年の2025が22万円でひっかけ)、問2は「『阿蘇ファーム』が初めて議題になったのは第何回?」(正解56回)、問3は「『決定:保留』になった議題はいくつ?」(正解7件。資料全体を数える必要がある)です。
4通りとも2回とも全問正解でした。Argonは初期設定でも約5秒で8万字を読み切り、数える問3も正解です。10月8日のテストでは、考えない設定のClaude Haiku 5.5が数える問題を3回中2回間違えていたので、ここはArgonの地力が出た形です。費用はこの題だけArgonが高めで、1回16.82円、3.8 Flashは6.93円でした。入力が多いため単価の差がそのまま出ています。なお、同じ文章をArgonは55,921トークン、3.1 Proと3.8 Flashは58,167トークンと数え、Argonの方が約4%少なく数えました。
費用を「月の仕事」に直す
1回あたりの費用だけでは実感が湧かないので、12月1日の値上げ後も含めて並べておきます。前提は、社内テストの実費、1ドル150円、Argonは初期設定(5題だけ考える深さ:高)です。
| 仕事 | Argon(11月30日まで) | Argon(12月1日から、2倍) | 3.8 Flash |
|---|---|---|---|
| 電話メモを受付票に | 0.55円 | 約1.1円 | 0.56円 |
| 見積り計算+メール | 0.66円 | 約1.3円 | 0.64円 |
| 売上表で5問 | 2.43円 | 約4.9円 | 2.55円 |
| FAX注文書の読み取り | 0.98円 | 約2.0円 | 0.81円 |
| シフト表(Argonは考える深さ:高) | 9.76円 | 約19.5円 | 2.72円 |
| 8万字の議事録から3問 | 16.82円 | 約33.6円 | 6.93円 |
普段の仕事は、1回1円未満から数円で、Argonと3.8 Flashはほぼ同じです。差が開くのは、考える深さを高にする仕事と、長い資料を読ませる仕事で、12月からはその差が2倍に広がります。費用の問題ではなく「どの仕事にArgonを使い、どの仕事は3.8 Flashで済ませるか」の問題だと分かります。

この図は、6題の費用を2本の棒で並べたものです。左の4題は棒がほとんど同じ高さで、右の2題だけArgonの棒が伸びている、という見え方になります。
テストから分かった使い方のコツ——Flashとの使い分け
6つのテストをまとめると、使い方のコツは3つです。
一点目、普段の仕事は3.8 Flashで十分です。電話メモ、見積り、売上表、FAX、長い資料から探す、の5つで、ArgonとFlashはどちらも全問正解でした(3.1 ProはFAXで1回だけ誤り)。安くて速い方を使わない理由がありません。
二点目、Argonを使うなら考える深さを確かめる。初期設定は即答で、条件の多い仕事では取りこぼします。高にすると確実ですが、1〜2分半かかります。
三点目、Argonの本当の出番は、今回のような1問1答ではなく、「資料の山から成果物まで」「何十工程の作業を最後まで」という長い仕事です。これはGoogleの打ち出しで、今回の社内テストでは測っていません。次の章で、公式と第三者の実例を出典付きで並べます。
| 仕事 | 向くのは | 理由 |
|---|---|---|
| 電話メモ・問い合わせの受付票 | 3.8 Flash | 6回とも正解で、費用も速さもほぼ同じ |
| 見積りの計算と定型のメール | 3.8 Flash | 6回とも正解 |
| 売上表・CSVの集計 | どちらも可 | 正解は同じ。速さはArgonが上 |
| FAX・手書きの画像の読み取り | どちらも可 | ArgonとFlashは2回とも完璧。3.1 Proは1回誤り |
| 条件の多いシフト表・割り当て | 3.8 Flash(初期設定)か、Argon(考える深さ:高) | Argonの初期設定は0/3。高は3/3だが1〜2分半 |
| 8万字級の資料から探す・数える | 3.8 Flash(費用が約4割) | 正解は同じ。急ぐならArgonは約5秒 |
| 資料の山から提案書まで、長い工程を最後まで | Argon(Googleの説明) | 出力100万トークン・長い工程向けの設計。社内テストでは未測定 |
| 前世代3.1 Proを使っている | Argonか3.8 Flashへ | 3.1 Proは遅く高く、FAXで1回ありもしない誤字を作った |
X上では「計画はArgon、実行はFlash、仕上げはClaude」という使い分け(テンペさん @HimazinProducer)も出ていますが、これも個人の工夫です。基本的には、上の表の「向くのは」の列のとおり、仕事ごとに決めてください。

この図は、仕事の「大きさ」で2つのモデルを分けたものです。左の小さな仕事はFlash、右の大きな仕事はArgon、真ん中の条件の多い仕事は深さ次第、という見方です。
熊本の会社の仕事はどう変わるか——「任せられる仕事の大きさ」が変わる
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。先に熊本の構造から書きます。
熊本の構造——人は増えていない、吸い寄せられている
熊本銀行の資料(2025年1月22日時点)によると、JASM(菊陽町)の雇用計画は第1工場1,700名、第2工場1,700名の合計3,400名です。第1工場は2024年12月に量産を始め、第2工場は2027年末の量産予定。投資額は第1工場9,800億円、第2工場2兆850億円で、九州全体の半導体関連投資は公表ベースで6兆円以上、熊本県内の半導体関連の工場・開発棟の新増設は80件超にのぼります。
一方で、熊本県の人口は2000年から2024年で8%減(1,859千人から1,706千人)です。増えているのは菊陽町(+57%)、合志市(+29%)、大津町(+28%)と、進出地の周辺だけ。商業地の地価上昇率(2023年から2024年)は大津町が33%で全国1位、菊陽町が31%で全国2位でした。
読み筋はこうです。県内で人が増えたのではなく、限られた人材が半導体とその周辺へ吸い寄せられている。なので、事務職やパートの募集まで競合が増え、熊本の中小企業の採用は構造的に難しくなっています。この状況で「人を増やして仕事を回す」のは、年々難しくなる一方かなと思います。
もう一つの数字が、帝国データバンクの「生成AIに関する企業の動向調査」(2026年3月調査、有効回答10,312社)です。生成AIを「活用している」のは大企業46.5%、中小企業32.4%、小規模企業28.0%。中小企業の3社に2社はまだ使っていません。しかも「活用している」の多くは社員がチャットAIを触っている段階で、仕事を任せる仕組みまで進んだ会社はさらに少ない、というのが私たちの見方です。逆を返せば、いまはまだ横並びの手前で、半年早く始めれば差がつく時期です。

この図は、熊本の人の流れと、AI活用の現在地を1枚にしたものです。人は半導体へ、AIはまだ3社に1社、という2つの矢印で見てください。
何が変わるのか——「1問1答」から「任せる仕事」へ
社内テストで見たとおり、1問1答の仕事はもう今のGemini 3.8 Flashでほぼ満点です。なので、Gemini 4で変わるのは「質問に答える賢さ」ではなく、「どれだけ大きな仕事を、人が途中で手を入れずに任せられるか」です。それだけ聞くとよく分からないと思うので、Googleと第三者が示している実例を、出典と確度を付けて並べます。
| 実例 | 内容 | 出典・確度 |
|---|---|---|
| Geminiアプリのデモ | プロジェクトの資料がばらばらに入ったフォルダから、顧客向けの提案スライドを作り、メールまで送り、今後の依頼に備えて定期の自動処理も設定 | Google公式ブログ(10月13日)。公式のデモ |
| NASAの公開アーカイブ | 約8万ファイルから、デザインの決まりどおりのGoogleスライドを数分で作成 | @Google のX投稿。公式の主張(未検証) |
| 写真と寸法から3D | ソファの脚のデザイン案を作り、写真と寸法のスケッチから3Dプリンタ用のファイルを出力 | Google公式ブログ(10月13日)。公式のデモ |
| 文字の詰まったPDF | 自分のペースで読み進められる対話型のWebアプリに変換 | @GeminiApp のX投稿。公式のデモ |
| Box(文書管理サービス) | 実際の企業文書を使ったテストで、3.1 Proの71%から85%へ。データ分析が+23ポイント、資料からの報告書作成が+15ポイント | Boxのブログ。第三者(ベンダー自身のテスト) |
| ServiceNow | 3.8 Flashより作業の成功率が約20%向上。特に人事と顧客対応。社内ヘルプデスクの1次窓口に採用 | Google Cloudのブログ(10月14日)。各社の主張 |
| Isomorphic Labs(創薬) | PDFや特許の情報をまとめる作業が、数週間から数時間に | Google公式ブログ(10月13日)。各社の主張 |
| 経理・財務の用途 | 帳簿の突き合わせ、スプレッドシートの数式作成、予算と実績の差の分析を自動化できる | Google Cloudのブログ。顧客事例ではなく製品の説明 |
共通しているのは、「資料の山」「何十工程」「最後まで」という言葉です。Boxの業種別の数字(官公庁76%から94%、医療57%から87%、法務64%から75%)も、文書の多い業種ほど伸びています。Googleの説明では、Argonは「システムの境界を守り、見つからなかったことは正直に報告し、取り返しのつかない手順の前には人に確認する」ように訓練され、開発のテストで近道をしようとする割合が2%に下がった、とされています。任せる仕事が大きくなるほど、この「勝手に進めない」性質が効いてきます。
正直なところ、熊本の企業がArgonを使った事例は、2026年10月18日時点では公式にも第三者にもX上にも存在しません。中小企業・地方企業・製造や建設や介護の業種での事例も見つかりませんでした。なので、ここから先は「事例」ではなく「活用イメージ」です。事例のように読まないでください。

この図は、「1問1答」と「任せる仕事」の違いを、人が間に入る回数で表したものです。右側の形が、Googleがデモで見せている使い方です。
業種別の活用イメージ(事例ではありません)
熊本でよく見る6つの業種で、「今のFlashで足りる仕事」と「Argonで任せられるようになるかもしれない仕事」を分けて書きます。後者はGoogleの説明と公式デモ、第三者の測定から置き換えたイメージで、実際に動かして確かめたものではありません。時間の数字は書きません。
| 業種 | 今の3.8 Flashで足りる仕事(社内テストで確認した型) | Argonで任せられるようになるかもしれない仕事(活用イメージ) |
|---|---|---|
| 製造 | FAX・手書きの注文書を受注データに。日報の要約 | 写真と寸法から治具や部品の3Dデータを起こして試作用のファイルまで(公式デモの型)。工場の生産計画の改善(Googleの説明に一文だけ。数値なし) |
| 建設・リフォーム | 電話メモの受付票。見積りの計算とお客様へのメール | 現場写真・図面・過去の見積りの山から、提案書と工程表の下書きまで一気に(Geminiアプリのデモの型) |
| 食品・農業 | 月別売上表の集計。問い合わせの仕分け | 出荷記録・気象・取引先の注文履歴の山から、来期の作付けや仕込みの計画書の下書き(資料からの報告書作成が+15ポイント、というBoxの測定の型) |
| 観光・小売 | 条件つきのシフト表(Flashの初期設定で3/3)。口コミの分類 | 複数の宿泊プラン・写真・過去の販促資料から、季節ごとの告知スライドとメールの下書きを定期的に(公式デモの型) |
| 医療・介護 | 予約変更の連絡文の仕分け。記録の要約 | 計画書・記録・法令の資料を突き合わせた帳票の下書き(Boxの医療分野の測定57%から87%の型。個人情報の扱いはWorkspace契約か有料APIが前提) |
| 士業・事務 | 8万字級の議事録や契約書から探す・数える | 契約書を条文ごとの表にして論点を抜き出し、決算の要点をまとめる(X上の報告の型。最終判断は専門家、と投稿者自身も書いている) |
左の列は、社内テストで3.8 Flashが全問正解した型の仕事です。右の列は、正直なところ、Googleのデモと第三者の測定から「熊本の仕事に置き換えると」と想像したものに過ぎません。ただ、置き換えてみると共通点が見えます。右の列は全部「資料の山を渡して、成果物を受け取る」形で、人が間に入る回数が減っています。人を増やせない熊本の会社にとって、増やすべきなのは「AIに1問聞く回数」ではなく「AIに丸ごと渡す仕事の数」だ、というのが私の見方です。

この図は、6つの業種の活用イメージを一覧にしたものです。図の下に「活用イメージ・事例ではありません」と入れてあるのは、そのままの意味です。
始め方3ステップ
まず一点目、入口を決める。会社のWorkspaceがBusiness Standard・Plus・Enterpriseなら、管理者にAI Expanded Accessの追加契約を相談してください(価格は未公表なので、見積りを取る形になります)。Business Starterなら追加契約も付けられません。個人で先に試すなら、Google AI Pro(月2,900円)です。この場合は社外秘を入れず、公開済みの文章か架空の題材で練習します。
二点目、考える深さを高にして、条件の多い仕事を1つ頼む。社内テストのシフト表のように、条件を箇条書きで10個並べ、「全部守ったか、1つずつ確認して書いてください」と頼みます。初期設定のまま即答してきたら、考える深さの設定を見直してください。同じ仕事を3.8 Flashにも頼んで、答えと時間を見比べると、自社の仕事でどちらが向くかが分かります。
三点目、測ってから広げる。同じ仕事を3回以上流し、条件を守れた回数、人が手直しに使った分数、かかった時間、費用の4つを数えます。差が出なければ3.8 Flashで、Argonでないとできない仕事が見つかったら、その仕事だけArgonに回します。逆を返せば、この測り方さえ作っておけば、12月の値上げ後も、次のGemini 4ファミリーが出ても、同じ手順で判断できるということです。

この図は3ステップの流れです。最初の一歩は、自社のWorkspaceの契約名を確かめるところからです。
注意点——正直なところ
正直なところ、Argonにも落とし穴があります。社内テストで見えたことと、公式の注記、先行して試した方々の声を合わせて、9つにまとめます。
| 注意点 | 何が起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| 社外秘の扱い | 個人のGoogleアカウントでは、入力内容を人が確認したり改良に使ったりする場合がある(公式ヘルプに明記) | 会社の情報はWorkspace契約か有料API。個人アカウントは公開済みの文章で練習 |
| 利用回数の上限 | 個人向けは計算量で上限が決まり、5時間ごとに回復。X上では「Proは4〜5往復で上限」「上限中は3.8 Flashまで使えない」の声。Workspaceは1日200回 | 業務に組み込む前に、自社の使い方で上限の体感を確かめる |
| 12月1日の値上げ | APIは入力も出力も2倍。3.1 Proより高くなる | 今の価格で予算を組まない。社内テストの費用は2倍で見る |
| 初期設定は考えない | 条件10個のシフト表で3回とも違反 | 条件の多い仕事は考える深さを高に。アプリでも設定を確認 |
| もっともらしい誤り | モデルカードが既知の限界として明記。社内テストでは3.1 Proが画像にない誤字を作った。はてなブックマークにも「要約が全部作り話だった」という声 | 人が最後に読む。根拠の箇所を一緒に出させる |
| 日本語の性能の公式数値はない | モデルカードにも評価方法の資料にも、日本語や多言語の性能スコアは載っていない | 「日本語に強い」は公式には言えない。自社の文書で測る |
| 英語のみ・米国のみの機能 | Mac版アプリのAntigravityは英語だけ。外部アプリ連携の多くは米国・英語だけ。UltraのGemini Agentも米国・英語だけ | 日本で使えるのは、アプリのチャット・AIモード・API・Gemini Enterpriseが中心 |
| データの保管場所 | Gemini EnterpriseとGoogle Cloud経由では、選べるのは米国・EU・globalだけで東京はない | 保管場所に決まりがある業種は、規程と照合してから |
| 年齢と契約の条件 | 仕事用アカウント・API・AI Expanded Accessは18歳以上。AI Ultra Accessは新規販売終了 | 未成年の社員への割り当ては不可。追加契約はExpanded Accessの一択 |
もう一つ、速さについて。Argonは考えない仕事では3つの中でいちばん速く、8万字の議事録を約5秒で読み切りました。ただ、X上には「速くても、指示を忘れたり誤ったりして人の確認が増えると、速さが帳消しになる」(@shiroikoibitoa)という声もあります。個人の体感ですが、社内テストのシフト表で起きたことと同じ構造です。「速い=正しい」ではなく、「速いときは、考えていないかもしれない」と疑ってください。

この図は、上の9つの注意点を8行のチェックリストにまとめたものです(保管場所と、年齢・契約の条件は1行にしています)。会社で使い始める前に、担当者と一緒に一度なぞってください。
よくある質問
熊本の会社はGemini 4 Argonを使うべきですか
「今すぐ全部をArgonに」ではないかなと思います。社内テストでは、電話メモ・見積り・売上表・FAX・長い資料から探す、という普段の仕事は今のGemini 3.8 Flashで十分でした。Argonを使うべきなのは、条件の多い仕事を考える深さ「高」で任せるときと、資料の山から成果物までの長い工程を任せるときです。後者はGoogleの説明で、自社の仕事で測ってから判断してください。
会社のGoogleアカウントで使えますか
Google Workspaceの標準契約(Business Starter・Standard・Plus、Enterprise)では使えません。Business Standard・Plus、Enterprise Standard・Plusに追加契約「AI Expanded Access」を付けると1日200回まで使えます。Business Starterには追加契約を付けられません。価格は公式ページに未掲載なので、管理者がGoogleか販売代理店に確認してください。契約内容で見え方が変わる、という声がX上にもあります。
無料で使えますか
使えません。無料プランとGoogle AI Plus(月725円)ではArgonは選べず、APIも無料枠では使えません。個人で使うならGoogle AI Pro(月2,900円)からです。
月いくらかかりますか
個人向けはGoogle AI Proが月2,900円、Ultraが月14,500円(5x)と32,000円(20x)の2段階(公式ページの表示。税込かどうかの表記はありません)。会社向けの追加契約AI Expanded Accessは価格が未公表です。APIは使った分だけで、社内テストでは普段の仕事が1回1円未満から数円、8万字の資料を読ませて1回約17円でした。12月1日からAPIは2倍です。
今のGemini(3.8 Flash)で足りるのではないですか
普段の仕事は、足ります。社内テストの6題すべてで3.8 Flashは全問正解でした(シフト表も初期設定のまま3回とも正解)。普段の仕事では、費用も速さもArgonとほぼ同じです。足りないのは「資料の山から成果物まで」のような大きな仕事で、ここはGoogleの説明にもとづく話です。まずは3.8 Flashで普段の仕事を任せる仕組みを作り、Argonはその先、という順番をおすすめします。
日本語は大丈夫ですか
公式には、日本語だけの性能の数字はありません。社内テストでは、熊本弁の「なおす=片付ける」を6回とも正しく読み、方言の注意書きまで付けました。X上にも「日本語が読みやすい」という感想があり、日本語の質への明確な不満は見つかりませんでした。一方で、3.1 Proが画像にない誤字を作った例もあるので、人が読む前提は外さないでください。
社外秘の情報を入れてもいいですか
個人のGoogleアカウントには入れないでください。公式ヘルプに「機密情報は入力しないで」と明記され、人が確認したり改良に使ったりする場合があります。Workspace契約、有料API、Gemini Enterpriseは学習に使われないと明記されています。会社で使う前に、入れてよい情報の線を社内で決めてください。
Gemini 3.1 Proを使っていますが、乗り換えるべきですか
乗り換えてよいと思います。社内テストでは、3.1 Proは3つの中でいちばん遅く高く、FAXの読み取りで1回ありもしない誤字を作りました。3.1 ProはAPIではプレビュー版のままで、最終更新は2026年2月です。普段の仕事なら3.8 Flash、条件の多い仕事や長い工程ならArgon(考える深さ:高)へ、が現実的な乗り換え先です。
まとめ——「Gemini 4にしたから正確になる」ではなく「任せる仕事の大きさが変わる」
最後に3行でまとめます。
- Gemini 4 Argonは、2026年9月30日に発表、10月13日(米国時間。日本語版の公式ブログは10月14日付)に一般提供が始まった新しい最上位モデルです。変わるのは1問1答の賢さではなく、「資料の山から成果物まで」「何十工程を最後まで」という任せられる仕事の大きさで、ここはGoogleの説明です
- 社内の実機テストでは、普段の仕事(電話メモ・見積り・売上表・FAX・長い資料)は今の3.8 Flashでもほぼ満点でした。Argonは初期設定だと即答し、条件10個のシフト表で3回とも違反。考える深さを高にすると3回とも正解でしたが1〜2分半かかります(1ドル150円、全体50回・約300円の小さなテスト)
- 会社のWorkspaceの標準契約では使えず、追加契約のAI Expanded Access(1日200回)か、個人向けのGoogle AI Pro(月2,900円)が入口です。個人アカウントに社外秘は入れないこと、APIは12月1日から2倍になること、この2つを覚えて帰ってください
人を増やせない熊本の会社にとって、増やすべきなのは「AIに1問聞く回数」ではなく「AIに丸ごと渡す仕事の数」です。まずは、自社のWorkspaceの契約名を確かめるところから始めてみてください。
WizTryでは、熊本を中心に、生成AIを実務で使うための企業研修と、AIエージェントの導入支援を行っています。「どの仕事から任せればよいか」「社外秘の線をどう決めるか」といった相談は、熊本の生成AI研修やお問い合わせから、お気軽にお寄せください。
※本記事は2026年10月18日時点の公式情報と社内の実機テストにもとづきます。料金・仕様・提供範囲は変わることがあります。最新の情報はGoogleの公式ページでご確認ください。テストの登場人物・店名・会社名はすべて架空です。
参考にした情報
一次情報(Google公式)
- Gemini 4 Argon: our next era of frontier intelligence(発表、2026年9月30日)
- Gemini 4 Argon: Built to solve your hardest problems(一般提供、2026年10月13日)
- Gemini 4 Argon が Gemini アプリに登場(日本語版公式ブログ、2026年10月14日)
- Gemini 4 Argon モデルカード(PDF、2026年10月)
- Gemini API 料金表
- Gemini API Gemini 4 Argon モデル仕様
- Gemini API 利用規約(データの扱い)
- Use Gemini Apps with a work or school Google Account(Workspace契約ごとの可否の表、英語)
- AI Expanded Access(Workspace管理者向けヘルプ、英語)
- AI Ultra Access(Workspace管理者向けヘルプ、英語)
- Google AI プラン(日本の月額)
- Google AI Pro・Ultra の提供国
- Gemini アプリのプライバシー(個人アカウントのデータの扱い)
- Google Workspace 料金(日本)
- Gemini Enterprise リリースノート
- Gemini 4 Argon available on Google Cloud(顧客事例、2026年10月14日)
熊本の数字
第三者の測定・先行記事
- Box「Gemini 4 Argon pushes the frontier of enterprise work」
- Artificial Analysis のX投稿(総合指標・プログラミング指標)
- 窓の杜「『Gemini 4 Argon』が一般提供開始」(2026年10月14日)
- ITmedia AI+「『Gemini 4 Argon』とは」(2026年10月2日)
- digitalapplied.com「Who can use Gemini 4 Argon」(プランごとの可否。公式表と一致)
Xの投稿(個人の感想・自己申告を含む)
- たか田 @daifukujinji(考える深さが低のままのことがある)
- たか田 @daifukujinji(重い仕事10個の頼み方)
- テンペ @HimazinProducer(計画はArgon・実行はFlash・仕上げはClaude)
- チャエン @masahirochaen(3モデルの動画比較)
- @KutexKute(日本語が読みやすい)
- @Nicolash4zp(会社のWorkspaceアカウントでは出てこない)
- @icyeos(12月1日からの値上げ)
- @shiroikoibitoa(速くても仕事が終わらない)
- @Google(NASAの公開アーカイブからスライド)
- @GeminiApp(PDFを対話型Webアプリに)
- @GeminiApp(写真と寸法から3D CAD・STL)
- @Haleeeemahh(公式の比較表の転載)