7月28日の熊本地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
先月末に公開した無償の支援サイト「くまもと被災者支援ナビ」に、支援場所マップという機能を追加しました。給水所、無料で入れるお風呂、営業しているガソリンスタンド、災害用トイレを、1枚の地図の上にまとめて表示します。
https://kumamoto-shien.jp/support-map
この記事では、なぜ熊本のAI会社が災害情報サイトを作っているのかという話から、地図の使い方までをご案内します。実際の画面をそのまま貼っていきます。
熊本のAI会社が、災害支援サイトを作っている理由
今回の地震でも思ったことですが、災害の直後は、いろんなところからいろんな情報が出ます。
県、市町村、各省庁、国土交通省、自衛隊、水道企業団、社会福祉協議会。それぞれが、それぞれのページで、それぞれのタイミングで発表します。全体の状況を把握しようと思ったら、100を超える公式ウェブサイトを見て回ることになります。
さらに、ホームページより先にXで出す自治体や機関もあります。そちらを追おうとすると、数十から数百の公式アカウントが確認先に加わります。
しかも、災害情報はリアルタイム性がすべてです。朝に確認した給水所が、昼には場所も時間も変わっています。つまり、100以上のサイトと数百のアカウントを、数時間おきに、何度も見に行かないといけない。
これは人ができることではありません。
なので、AIエージェントの力を借りてやろう。そう考えて始めたのが、この取り組みです。AIエージェントというのは、指示を出すと自分で調べて自分で判断して作業まで進めるAIのことです。質問に答えるだけのAIとは、そこが違います。

指揮官のAIエージェントと、リサーチするAIエージェント
設計で気をつけたのは、1体のAIに全部やらせないことでした。
まず、指揮官となるAIエージェントを設計しました。全体の段取りを持っていて、どこを、どの順番で、何を基準に確認するかを判断する役です。
その下に、地域とカテゴリごとに最新情報をリサーチするAIエージェントを設計しました。この市町村のこの分野、と担当を分けて、それぞれが同時に調べに行きます。
時間が来ると、指揮官が担当のエージェントを一斉に動かします。いまは自動と手動をあわせて、1時間から2時間に1回のペースで発動させています。指示を出すと、指定した100を超える公式ウェブサイトと数百の公式アカウントを見に行って、信頼できるデータだけを集めて、ファクトチェックを通ったものをサイトに取り込みます。
出どころが確認できないものは、どれだけ有益そうに見えても入れません。逆を返せば、公式ページを実際に開いて確かめられた発表だけが、このサイトに載っているということです。
各省庁、各市町村、国土交通省、自衛隊。こうした確認すべき情報を1か所で一覧できる場所は、私が探した限り他にありませんでした。ないなら作ろう、というのが出発点です。

集まった情報が莫大になったので、地図にしました
続けているうちに、今度は別の問題が出てきました。情報が集まりすぎたのです。
公開した当初、給水所は文字のリストで並べていました。それで十分だと思っていました。ところが掲載できる場所が日に日に増えていき、給水所のリストだけで画面をひたすらスクロールする状態になりました。あとから追加した「お風呂に入れる場所」の欄は、およそ4万ピクセル先にありました。
これは、載っていないのとほとんど同じです。
情報を増やすほど、必要な情報が遠くなる。文字を縦に並べる限り、この矛盾は解けませんでした。なので、並べ方そのものを変えました。地図の上に置けば、自分の家からいちばん近い場所が一目で分かります。

4種類の支援場所を、色分けしたピンで表示します
地図に出るピンは4種類です。
| ピンの色 | 種類 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 青(水) | 給水所 | 場所と受付時間、発表した市町村 |
| 緑(湯) | お風呂・シャワー | 無料で入れる浴場、受付方法 |
| オレンジ(油) | ガソリンスタンド | 直近に「営業可」と報告があった店 |
| 紫(WC) | 仮設・災害用トイレ | 開設中の避難所に整備されたもの |
2026年8月1日の朝8時半時点で、掲載しているのは合計242か所です。内訳は給水が81か所、お風呂が38か所、ガソリンが109か所、災害用トイレが14か所になっています。
ピンのふちが紫色になっているものは、市町村や県の発表ではなく、施設や企業が自分で出した支援のお知らせです。旅館やお店が「被災された方はお風呂をどうぞ」と発表してくださっているものが、ここに入ります。ありがたい情報ですが、行政の発表とは性質が違うので、見た目で区別できるようにしています。

ピンを押すと「それがいつの情報か」まで出ます
災害の情報でいちばん怖いのは、間違った情報ではなく、古い情報だと思っています。
3日前に終わった給水所へ、水を積むつもりの空のポリタンクを持って向かう。これが起きてしまうと、サイトがない方がまだましだったということになりかねません。
なので、ピンを押したときに出るカードには、場所と住所だけでなく、次の3つを必ず表示しています。
- その情報が発表された日時
- こちらで最新かどうかを再確認した日時
- 発表元(押すと公式ページが開きます)

右の画面が、実際にガソリンスタンドのピンを押したところです。営業できると報告されたのが7月31日の14時18分、こちらで再確認したのが8月1日の8時03分、発表元は資源エネルギー庁の検索システム、と出ています。
この「発表された時刻」と「確認した時刻」を分けているのが、地味ですが一番こだわった点です。逆を返せば、この2つが書けない情報は載せない、というルールで運用しています。
ガソリンの営業情報は、報告から12時間を過ぎると「古い報告」と警告が出て、24時間を過ぎると地図から自動で消えます。放っておくと勝手に消えてくれる仕組みにしておかないと、いつか必ず消し忘れるからです。

AIに任せて、実際につまずいたこと
良いことばかり書いても仕方がないので、失敗も書きます。
7月31日の朝、給水情報に抜けが見つかりました。菊陽町と大津町の当日の給水は、町のホームページではなく「大津菊陽水道企業団」という別の団体のサイトに先に出ていたのです。町のページだけを見に行っていたAIは、それを見つけられませんでした。
同じ日に、こんなことも分かりました。甲佐町は「緊急情報」と「重要なお知らせ」という2つの掲載枠を使い分けていて、り災証明の案内は後者に出ていました。上天草市は毎日新しい記事を作るため、前日のURLを開くと存在しないページになります。ある市では給水所の件数は9か所のまま変わっていないのに、中身が1か所だけ別の場所に入れ替わっていました。
つまり、AIに任せた瞬間に完成する仕事ではありませんでした。
うまくいかなかったところを見つけて、見に行く先を1つずつ足していく。この繰り返しでしか精度は上がりません。研修先の会社でよくお伝えしている「AIは新人と同じで、教えた分だけ賢くなる」という話は、自分たちのサイトでそのまま起きました。今はこうしたつまずきを手順書に全部書き足して、次の巡回から拾えるようにしています。
正直なところ、いまも完璧ではないと思います。なので、サイトには最終確認から3日が過ぎると「情報が古い可能性があります」と自動で表示が出るようにしてあります。間違えない仕組みではなく、間違えたときに気づける仕組みの方を先に作りました。
いまは1日に1万回以上使われています
おかげさまで、いまは1日に1万回以上使われています。
見に来てくださる方の7割以上はスマートフォンからです。そして流入元を見ると、いちばん多いのは「リンクを直接開いた人」でした。LINEやメッセージで、誰かが誰かに手渡しでURLを送ってくれている。それがこのサイトの広がり方の現状です。
このサイトには広告が1つもありません。会員登録もありません。診断機能に入力した内容が、どこかへ送られることもありません。もっと広まることで、少しでも助かる人がいればいいなと思っています。
マップ表示の使い方
ここからは使い方です。
サイトを開いたら、いちばん上にある黄色いボタンを押してください。それが支援場所マップです。

地図が開いたら、やることは2つだけです。
- 探したいものを選ぶ。地図の下にある「探したいもの」で、いま必要な種類だけにチェックを残します。お風呂だけ見たいならお風呂だけにすれば、緑のピンだけが地図に残ります
- ピンを押す。利用時間と発表元がその場に出て、「Google Mapsで開く」を押せばそのまま道案内が始まります
地図の操作が苦手な方のために、地図の下には一覧も用意しています。「八代市」「シャワー」のように文字で絞り込めるので、こちらの方が早い方はぜひ使ってみてください。

初期表示は熊本市ですが、八代市・宇城市・宇土市へはボタン一つで移動できます。「現在地を見る」を押せば、いまいる場所のまわりが表示されます。
トップページからは、地図以外にも次のページへ行けます。
- きょうの給水・断水(21市町村の公式発表をもとに更新)
- 炊き出し・食料、災害ごみ・仮置場
- 通れる道マップ(国土交通省の道路規制データを表示)
- り災証明の申請・準備(写真の撮り方を図解で説明)
- もらえる支援かんたん診断(5つの質問に答えるだけ)
- 悪質業者・詐欺への注意
一度開けば端末の中に保存されるので、電波が弱い場所でもそのまま読めます。文字を大きくするボタンも上に付けています。
ひとつだけお伝えしたいことがあります。熊本県の無料入浴支援は、お住まいの市町村に協力施設がなくても、県内の施設を利用できると県が明記しています。近くにないから無理だと諦めていた方は、ぜひ地図の緑のピンを確認してみてください。
最後に
WizTryは熊本でAI研修とAI導入支援をしている会社です。このサイトは仕事ではなく、私自身も被災した1人として作りました。私の自宅も地震から数日は断水が続きましたが、いまは復旧しています。まだ水が出ない地域や、これから手続きが始まる方のために、更新は続けます。
もしお知り合いに困っている方がいらっしゃったら、URLを渡していただけると嬉しいです。
掲載内容の誤りやリンク切れを見つけた方は、info@wiztrydx.com までお知らせください。すぐに直します。
余震がまだ続いています。どうかご安全に。熊本の一日も早い復旧を心から願っています。
WizTry株式会社 代表取締役 末松 光太郎