「AIがうまく動かないので、指示をもっと細かく書きました」——研修や導入相談でお伺いすると、必ずこの話になります。禁止事項を増やし、例文を並べ、注意書きを足していく。真面目な会社ほど、指示書が分厚くなっていきます。
ところが2026年7月25日、Claudeをつくっているアメリカのアンソロピックが、それとは逆の話を公開しました。自分たちの開発ツールにAIへ毎回読ませていた土台の指示書から、8割以上を削除した。それでも、社内の性能テストで測れる悪化はなかった、と。
考え方の名前としては、コンテキストエンジニアリング(AIに渡す前提情報の設計)と呼ばれています。名前は難しく聞こえますが、やることは「AIに何を読ませて、何を読ませないか」を決めるだけです。そして今回の発表の要点は、たったこれだけに集約できます。
指示を足すより、矛盾を減らして判断の基準を渡したほうが、AIは賢く動く。
今日は、この話を中小企業の日常業務まで翻訳します。自社のカスタム指示、社内のプロンプト集、AI利用ルール——どこを削り、どこを残すのか。今週手をつけられる順番まで書きます。内容は2026年7月25日時点の公開情報がもとで、公式ブログと公式の日本語ドキュメントを確認しました。ひとつ先にお伝えすると、これは最新世代のAIについての話です。社内で古い機種や自動化ツールを使っている場合、あてはまらない部分があります。そこも後半で正直に線を引きます。
何が起きたのか——開発元が自分の指示書を8割捨てた
まず用語を1つだけ。AIには、私たちが打つ依頼文のほかに、その手前でシステム側が毎回読ませている土台の指示文があります。「あなたはこういう道具を持っていて、こう振る舞ってください」という、いわば就業規則です。ChatGPTやGeminiでいえば、利用者が設定できるカスタム指示に近い位置にあるものだと考えていただければ分かりやすいはずです。
今回削られたのは、この土台の指示書でした。開発ツールの指示書から8割以上を削除して、コード生成の社内評価では測れる低下がなかった、と公式に書かれています。
開発担当者の説明も出ています。
新しい世代のモデルは、短い指示書のほうを好む。例を見せることは、むしろモデルを縛ってしまう。モデルは、私たちが与える例よりも想像力があるからだ。
正直なところ、これを読んだとき私は少し背筋が伸びました。研修で「良い例を3つ見せましょう」とお伝えしてきた側なので、前提が変わったことは認めないといけないな、と。

削除前と削除後を並べると、変化がはっきりします
公式ブログには、実際に消した文章と、代わりに置いた文章が載っています。要約するとこうです。
削除前(禁止で縛る書き方):
コードにコメントは書かないのを既定とせよ。複数段落の説明文や複数行のコメントの塊は絶対に書くな。1行までにせよ。頼まれない限り、計画・判断・分析の文書を作るな。
削除後(判断の基準を渡す書き方):
周囲のコードと同じように読めるコードを書け。コメントの量・名前の付け方・作法を、周囲に合わせよ。
言っている方向は、実は同じです。違うのは、前者が行動を禁止するリストで、後者が判断の基準だという点だけです。基準を渡された側は、状況に応じて正しい方に倒せます。禁止リストを渡された側は、リストに書かれていない状況で固まります。
なぜ8割も削れたのか——理由は3つあります
一点目に、AIの判断力が上がったこと。以前のモデルは、細かく縛らないと最悪の結果を出すことがありました。だから開発側は「常に正しいとは限らない強い指示」を、あえて入れていた。そのトレードオフを飲む必要がなくなった、ということです。
二点目に、AIが使える道具が増えたこと。以前は、覚えておいてほしいことを全部指示書に書いておくしかありませんでした。いまは、必要になったときに自分で資料を読みにいく、自分でメモを残す、といった動きができます。最初に全部渡さなくても、必要なときに取りに行けるわけです。
三点目に、これがいちばん大事なのですが、盛りすぎた指示書の中で矛盾が起きていたこと。次で詳しく書きます。
いちばんの発見は「矛盾がAIの能力を削る」だったこと
公式ブログには、自社の利用記録を読み返して気づいたこととして、こう書かれています。1つの依頼の中に、「必要に応じてドキュメントを残せ」という指示と、「コメントは書くな」という指示が同居していた。土台の指示書、作業手順書、そして利用者の依頼文が、互いにぶつかっていた、と。
AIはこの矛盾を前にすると、まず「どちらに従うべきか」を考えることに労力を使います。人間なら「今回は社長がこう言っているからこっち」と現場判断できますが、AIは毎回慎重に検討します。つまり矛盾は、AIの能力そのものを削ってしまうのです。
それだけ聞くとよく分からないと思うので、会社の中の話に置き換えます。
新人に、社長が「気づいたことはどんどん報告して」と言い、部長が「余計な報告は要らない」と言い、就業規則には「報告は所定の書式で」と書いてある。この新人は、報告のたびに固まります。仕事の能力ではなく、指示の設計の問題です。
弊社の資料室(AIに読ませている社内フォルダのことです)でも、同じことは起きます。全社ルールに「承認なしに外部へ公開しない」と書き、部署ルールに「定期の投稿は自動で出してよい」と書く。この2つを離れた場所に置くと、AIは安全側に倒れて毎回止まります。なので弊社では、例外は、例外を許した本文のすぐ隣に、条件つき・承認者つきで書き足すようにしています。逆を返せば、条件を添えれば例外は書いてよい、ということです。

昔の常識と今の常識——6つの転換
公式ブログは、これまで正しいとされてきた作り方を6つ挙げて、それぞれ「今はこうする」と書き換えています。ここが今回の中心です。全体像を表で出してから、1つずつ噛み砕きます。
| これまでの常識 | これからの作り方 |
|---|---|
| ルールで細かく縛る | 判断の基準を渡して任せる |
| 良い例をたくさん見せる | 頼み方の入口(依頼票)を整える |
| 大事なことは全部先に渡す | 必要になったときだけ開かせる |
| 大事な指示は何度も繰り返す | 決まった1か所に一度だけ書く |
| 覚えてほしいことは人が書き足す | AIに自分でメモを取らせる |
| 仕様は文章で説明する | 実物(見本・型・データ)を渡す |

転換1: ルールで縛るのをやめて、判断の基準を渡す
先ほどの削除前・削除後がまさにこれです。「〜するな」を10個並べるより、「何を大事にして判断してほしいか」を1行書くほうが、結果が良くなる。
中小企業の現場でいえば、社内のAI利用ルールがこれに当たります。「顧客名を入れるな」「社外に出すな」「英語で書くな」「箇条書きにするな」と禁止を並べた1枚は、たいてい守られません。代わりに「これは誰に見せる文章で、何が満たされていれば合格か」を書く。守られるルールは、短くて理由が書いてあるものです。
転換2: 例を見せるのをやめて、頼み方の入口を整える
ここは少し意外に感じるところだと思います。従来は「例を見せるのが最短」でした。それが今は、例を見せると探索の幅を狭めてしまう、とされています。
代わりに推奨されているのが、頼み方の入口の設計です。会社の言葉に直すと「依頼票の項目を整える」こと。目的、読者、使い道、締切、外してはいけない条件——この5項目が埋まる依頼票を用意しておけば、例文を貼らなくてもAIは狙いを外しません。項目名そのものが、AIへのヒントになるからです。
正直なところ、例が完全に無駄になったわけではありません。文体や書式をぴったり真似させたいときは、いまも例が最短です。公式のプロンプト指針にも「まず1つ見せて、必要なら足す」と書かれています。書式を揃えたいときは例、考え方を任せたいときは基準。この使い分けが安全かなと思います。
転換3: 全部を先に渡すのをやめて、必要なときだけ開かせる
これは段階的開示と呼ばれる作り方です。最初に読ませる紙は1枚だけにして、詳細は別ファイルに置き、AIが必要になったときに自分で開く。
人間の仕事もそうですよね。全マニュアルを暗記して働く人はいません。棚の場所と目次を知っていて、必要なときに取り出す。それと同じ設計にする、という話です。
弊社の資料室は、この4階層でできています。
- 館内マップ1枚(どこに何があるか、読む順番だけ)
- 全社ルール(メールの返し方、絶対にやらない操作、用語の区別)
- 部署ルール(研修部・営業部・広報部などの、その部署だけの決まり)
- 担当ごとの手順書(1つの仕事のやり方。関係する依頼が来たときだけ開かれる)
1枚目のマップは短く、細かい話は下の階層に置く。最初に読ませる紙が薄いほど、AIは速く正確に動きます。

転換4: 繰り返しをやめて、決まった1か所に一度だけ書く
以前のAIは、指示を忘れたり、後ろに書いた指示ばかり見たりしました。だから同じことを何度も書いておく必要があった。いまは1回でよい、という変化です。
会社で言えば、注意書きを書く場所の話です。「請求書は必ず税率を確認」を朝礼で毎日言い、マニュアルにも書き、付箋も貼る。それをやめて、請求書のフォーマットそのものに1行入れておく。書く場所を1つに決めて、そこだけを直す。この方が、直したことが確実に効きます。
転換5: 人が書き足すのをやめて、AIに自分でメモを取らせる
以前は、覚えてほしいことを人がマニュアルに追記していました。いまは、AIが自分で「これは覚えておくべきだ」と判断してメモを残せます。
弊社はこの仕組みを1年近く使っていて、実感としてはっきり効いています。ポイントは、メモの書き方を決めておくことです。公式ドキュメントの推奨をそのまま借りると、こうなります。
1つの教訓を1ファイルに。先頭に1行の要約を置く。訂正も、うまくいった方法も、なぜ大事だったかとあわせて記録する。すでにある資料に書いてあることは保存しない。重複を作らず、既存のメモを更新する。間違いだと分かったメモは消す。
この「なぜ大事だったか」を一緒に書かせるのがコツです。理由のないメモは、状況が変わったときに使えません。
転換6: 文章で説明するのをやめて、実物を渡す
最後がいちばん実務的です。仕様を文章で細かく説明するより、実物を渡したほうが伝わる、という話です。
- こんなデザインにしてほしい → 説明文より、見本のページや画像
- こういう表を作ってほしい → 説明文より、去年の実物のファイル
- こういう文体で書いてほしい → 説明文より、過去の自社の文章3本
- こういう条件を満たしてほしい → 説明文より、合否の判定表
弊社が研修で必ずお伝えするのは、最後の判定表です。「良い提案書とは何か」を文章で語るより、「この5項目に○が付けば合格」という表を1枚渡す。AIはそれを自分で採点しながら仕上げてきます。人間の新人教育でも同じことが起きるかなと思います。
中小企業では、どこを直せばいいのか——直す対象は4つ
ここまでは開発寄りの話が多かったので、日常業務に翻訳します。直す対象は、だいたいこの4つに収まります。

対象1: ChatGPTやGeminiのカスタム指示
一度書いて放置している会社が多い場所です。よくある悪い例が、これです。
箇条書きは使わないでください。丁寧語で書いてください。専門用語は使わないでください。長すぎないようにしてください。ただし詳しく説明してください。絵文字は使わないでください……
途中で矛盾していますよね(長すぎないように、でも詳しく)。しかも全部が禁止形です。直すなら、次の3行で足ります。
私は熊本の建設会社で総務をしています。作った文章は、社内の職人さんと取引先が読みます。専門用語が出てきたら一言で説明を添えてください。
誰が読むかを書くほうが、書式を10個禁止するより効きます。
対象2: 社内のプロンプト集
「便利な指示文100連発」のような一覧を作った会社は、いま一度見直してください。長い指示文が並んでいるだけの一覧は、たいてい使われなくなります。
作り直すなら、依頼票の形にします。項目は、目的・読者・材料・出してほしい形・外してはいけない条件の5つ。この型が1つあれば、100個の指示文は要りません。
対象3: AI利用ルール(禁止事項リスト)
これは削るというより、書き方を変える話です。禁止だけを並べた1枚は守られません。禁止の隣に、理由と、代わりにやってよいことを書きます。
- 効かない書き方: 顧客情報を入力しない
- 効く書き方: 顧客名や連絡先はAIに入力しない(外部に残る可能性があるため)。名前を伏せて「A社」と置き換えれば、相談してよい
こう書くと、現場は迷いません。ルールが機能しない原因は、たいてい厳しすぎることではなく、代わりの道が書かれていないことです。
対象4: 定型作業の頼み方(議事録・日報・報告書)
ここは逆に、削るのではなく整えるべき場所です。定型作業の質は、判断基準を1行入れるだけで安定します。
たとえば議事録なら、「決定事項・宿題・懸念点の3項目で、1,000字以内。誰がいつまでにやるかが書けていないものは宿題に入れない」。この最後の一文が判断基準です。これがあるかないかで、出てくる議事録の質が変わります。
指示書ダイエットの5ステップ
では実際にどう手をつけるか。1時間でできる順番にしました。

手順1: いま何を読ませているかを、全部机に出す
カスタム指示、社内のプロンプト集、AI利用ルール、業務マニュアル。AIに渡しているものを一箇所に集めます。ここで「思っていたより多い」と気づく会社がほとんどです。
手順2: 矛盾を探す(ここが最重要)
同じことについて2か所以上で違うことを言っていないか。「簡潔に」と「詳しく」、「自由に提案して」と「勝手に判断するな」。見つけたら、どちらかを消すか、条件を添えて共存させます。
コツは、AI自身に探させることです。資料をまとめて渡して、こう頼みます。
この資料の中で、互いに矛盾している指示、同じことを二重に言っている箇所、判断に迷う書き方を全部挙げてください。あなたが実際に迷った箇所を優先してください。
迷った本人に聞くのが、いちばん速いです。
手順3: 3つの箱に分ける
集めた指示を、次の3つに仕分けます。
- 常に必要(安全の線引き・会社固有の言葉・絶対にやらない操作)→ 1枚に残す
- ときどき必要(特定の仕事の手順)→ 別ファイルに出し、いつ使うかを1行書く
- もう不要(古い機種向けの回避策・当たり前のこと・作法の押しつけ)→ 消す
3番目が、思っているより多いはずです。「丁寧に書いてください」「間違えないでください」といった、書かなくても守られることは消してよい。
手順4: 「なぜ」を1行足す
削ったあとに1つだけ足します。それぞれのルールの理由です。公式ドキュメントにも、依頼と一緒に背景を渡すほうが結果が良くなると明記されています。
- 弱い書き方: 図は使わないでください
- 強い書き方: 図は使わないでください(印刷して現場で配るため、白黒でも読める形にしたい)
理由が書いてあると、AIは書いていない状況でも正しい方に倒せます。
手順5: 1週間、同じ仕事で比べる
削る前と後で、同じ依頼を出して比べます。判断は好みではなく、人が手直しした時間で見てください。ここが減っていれば成功です。増えていたら、削りすぎた場所を戻します。
大事なのは、全部を一度に削らないこと。まずは1つの業務、たとえば議事録だけで試す。それで手応えが出てから広げる。この順番をおすすめします。
そのまま使える雛形3本
コピペしてお使いください。業種や社内用語の部分だけ書き換えれば動きます。

雛形1: 仕事の依頼票(毎回これを埋めるだけ)
- 目的: この作業で何を達成したいか
- 読者: 誰が読むか(社内・取引先・お客様・現場)
- 材料: 使ってよい資料(添付・貼り付け)
- 出してほしい形: 文章/表/箇条書き、おおよその分量
- 外してはいけない条件: 期限、金額の扱い、書いてはいけないこと
- 迷ったら: どちらを優先するか(例: 分かりやすさを優先し、正確さに不安がある箇所は「未確認」と明記する)
雛形2: AIに渡す会社の基本ルール(1枚版)
- 当社は〔業種〕の会社です。〔地域〕で〔主な事業〕をしています。
- 社内で「〔略語〕」と言うときは〔正式名称〕を指します。取り違えないでください。
- お客様の名前・連絡先・金額はそのまま入力しません。伏せ字で相談します。
- 外に出る文章(メール・SNS・提案書)は、必ず人が確認してから送ります。AIは下書きまでです。
- 数字(見積・請求・在庫)は、人が計算を確認します。
- 分からないことは推測で埋めず、「ここは未確認です」と書いてください。
- 指摘を受けたら、次から同じ指摘を受けないようにこのルールへ追記してください。
雛形3: 判定表(品質を安定させたいとき)
この文章が合格かどうか、次の5項目で自己採点してから出してください。
- 読者(〔誰〕)が知らない言葉が説明なしで出ていないか
- 数字の出どころが書いてあるか
- 相手が次に何をすればいいか書いてあるか
- 事実と推測が区別してあるか
- 指定した分量に収まっているか 4項目以上に○が付かない場合は、自分で直してから出してください。
雛形2の最後、「指摘を受けたら追記してください」の1行が、地味ですが効きます。弊社ではこれを全社ルールにしていて、赤入れの教訓が手順書に溜まっていく仕組みにしています。同じ指摘を二度しないのが目的です。
削ってはいけない5つ
ここまで「削れ」と書いてきましたが、削ると事故る場所があります。基本的には、削ってよいのは行動を細かく縛る指示と例示で、残すのは理由・意図・会社固有の事実・安全の線引きです。具体的には次の5つ。
一点目、安全と承認の線引き。誰が送信ボタンを押すか、何を勝手にやらせないか。弊社では認証や送信に関わる操作は絶対に実行しないと明記していて、ここは短くしません。
二点目、会社固有の言葉の定義。実例でお話しします。弊社の資料室には「チャットと言えばGoogle Chat、チャットワークと言えばChatworkを指す。取り違え禁止」という1行があります。一般常識では判断できないので、これは削れません。同じように、社内の略語・商品コード・部署の呼び方は残してください。
三点目、数字と事実の出どころ。「金額はこのシートを正とする」「実績の数字はこの台帳の表現だけ使う」。ここが曖昧だと、AIはそれらしい数字を作ってしまいます。
四点目、法令や制度の要件。助成金や補助金の要件、業界の規制、資格が必要な業務。ここは判断に任せてはいけない領域です。
五点目、過去に事故った箇所の再発防止。一度失敗したことは、理由つきで残します。
つまり、削るのはAIが自分で判断できることで、残すのは社外の常識では分からないことです。この線引きさえ持っておけば、思い切って削れます。

弊社でやってみて分かったこと
弊社は熊本の小さな会社で、企業向けの生成AI研修とAI導入支援をしています(累計90社以上)。社内では10名のAI社員に、毎日18本の定時業務を任せています。朝の報告、会議のフォロー、日報、SNS投稿、ブログ。この記事の図解も、その中の1人が作っています。
その運用で、はっきり分かったことが3つあります。
一点目に、最初に読ませる紙を薄くすると、目に見えて速くなります。弊社の館内マップは、フォルダの地図と読む順番、そして絶対ルールの要約だけです。詳細は下の階層に置いてあります。
二点目に、赤入れは「叱る」ではなく「書き足す」で扱うと資産になります。AIの間違いの9割は、こちらの指示の穴です。なので直すのはAIではなく資料のほう。この運用にしてから、同じ間違いが繰り返されなくなりました。
三点目に、理由を書いていないルールは、いつか必ず邪魔になります。書いた本人が理由を忘れるからです。半年前の自分が書いた「〜は禁止」を見て、なぜ禁止したのか思い出せない。これは正直、何度もやりました。だから今は、禁止の隣に日付と理由と、決めた人の名前を書くようにしています。
よくある質問
ChatGPTやGeminiでも同じ考え方でいいですか
土台の考え方は同じです。読者・目的・判断基準を渡し、禁止を並べすぎない。ただし機種によって指示の効き方は違うので、削ったら必ず1週間比べてください。
短くしたら品質が落ちました。どうすれば
削りすぎた場所を1つずつ戻します。戻す優先順位は、安全の線引き、会社固有の言葉、数字の出どころ、の順です。書式の作法は最後でよい。
業務マニュアルを短くしろという話ですか
いいえ、逆です。マニュアルは詳しくてよいのです。変えるのは置き場所で、最初に全部読ませるのをやめて、必要なときに開く形に分けるだけです。マニュアルを捨てる話ではありません。
例を見せてはいけないのですか
禁止ではありません。書式や文体を揃えたいときは、いまも例が最短です。避けたいのは、考え方まで例で縛って、AIがもっと良い方法を思いついても選べなくすることです。
うちはまだ無料版です。関係ありますか
関係あります。無料版でも、カスタム指示に「誰が読むか」を1行入れるだけで出力は変わります。お金の話ではなく、書き方の話です。
AIに自分でメモを取らせるのは危なくないですか
置き場所と範囲を決めておけば大丈夫です。弊社はメモ用のフォルダを分け、顧客情報と財務は別扱いにしています。決めておくべきは「どこに書くか」と「何を書かないか」の2つです。
社内に反対する人がいます
「短くする」と言うと手抜きに聞こえるので、言い方を変えてください。「禁止を並べるのをやめて、判断の基準を書く」。目的は品質を上げることで、楽をすることではない、と伝わると通りやすくなります。
まとめ——足すのは理由、削るのは縛り
要点だけ並べます。
- 開発元が自社の土台の指示書を8割以上削り、測れる性能低下はなかった
- 理由は、AIの判断力が上がったこと、必要なときに資料を取りに行けるようになったこと、そして盛りすぎた指示書の中で矛盾が起きていたこと
- 矛盾はAIの能力を削る。同じことを2か所で違うように言っていないか、まず点検する
- 禁止を並べるより、読者・目的・判断基準を渡すほうが結果が良くなる
- 最初に読ませる紙は薄くして、詳細は必要なときに開く形に分ける
- 削ってはいけないのは、安全の線引き・会社固有の言葉・数字の出どころ・法令の要件・過去の事故
- 削ったら1週間、人が手直しした時間で比べる
今日か明日、5分でできる一手を1つだけ挙げます。いつも使っているAIのカスタム指示を開いて、禁止文を1つ消し、「この文章は誰が読むか」を1行足してください。それだけで出力が変わるのを、まずご自身の目で確認してみてください。

そこで手応えがあったら、次は社内のAI利用ルールを同じ要領で書き換える。この順番だと、社内も納得しやすいかなと思います。
ここまで読んで「自社の指示書を一緒に棚卸ししてほしい」と感じられた方は、熊本の生成AI研修のページをご覧ください。研修では、累計90社以上の支援で集積した業種別の活用事例をもとに、社内ルールと依頼票の作り方までハンズオンで扱っています。補助金活用で負担軽減も(最大75%・制度・要件により異なります)。AIエージェントの導入まで見据えている場合はサービス一覧、他社がどこから始めたかを知りたい場合は導入実績もあわせてどうぞ。